Secound Contect
英国SS
―わあ。・・・綺麗だな。
何となくパーティに退屈していた時、それが目に入った。
穏やかな夏の午後、噴水から飛び出す細かい水の粒が陽の光できらきらと輝いている。日本にもこの類のものは沢山あるけれど、イギリス庭園の中の風景に、どうしようもなく惹きつけられた。
華やかな空間の中で、そこだけが切り取られたように特別だった。
無意識にそっと手を伸ばす。
緩やかに流れていく時間。故郷とはまた違う―。
しばらく流れに揺られていると、姉の呼ぶ涼やかな声が聞こえてきて、慌てて振り返った。
今日、転入生がやってくるらしい―寮の中を駆け巡った噂を耳にした時、危うく何もない所で転びそうになってしまった。膨れ上がる感情が抑えきれない。
まるで、世捨て人を自称する自分が変われるような・・・。
―・・・。そんなに都合よくはいかないか。
未だに自分の抱えるものに整理すらついていないというのに。
苦笑して、ちらりと窓の外に視線を送る。どうせ、目の前で講義を続けている教授の声など耳を素通りしてしまう。
もうすぐやってくる授業の終わりをぼんやりと想いつつ、
―ユウリ・フォーダム。
なにかを予感させる名前を、ヒューはゆっくりと噛み締めた。
その日の午後。
寮長のアレックスに連れられてきた黒髪の少年を、雷に打たれたよう衝撃とともに、再び我を忘れて見入る羽目になった。
真昼の幽霊が、実体をともなってここにいる―制服を着ている分、少しだけ現実感があった。
どくん。
体を突き破りそうな心臓の音は、一方的に流れる感情をそのまま形にした。
「ユウリ・フォーダム!」
出したつもりはなかったのに、するりと抜け出た音声。
手にしていた本が落ちそうになる。それを抑えるのがやっとだった。
「・・・驚いたな、ユウリを知っているのかい、アダムス?」
「あ、え、いいえ」
また。突っ走って道を見失ってしまう・・・。
唇をかんだヒューは、自分に言いきかせる気分で言い訳と謝罪を口にした。
それでも、アレックスの続く言葉には、喜びを隠し切れなかった。
再びユウリに視線を送る。
瞳に吸い込まれそうになる意識の中で、すうっと肩の力が抜けていく。今は、素直に喜びを表現してもいいような気がした。
雑多な迷いなんて、どうでもいい―。
「・・・歓迎するよ」
セリフを最後まで言って、ユウリと手が触れた。
自然と笑顔がこぼれ落ちた。
そして。
今日もシャワー室に二人分のスペースを確保しながら、ひしめきあっている頭のなかからユウリの戸惑った顔を見つけて手招きする。
―黒い瞳がこちらを向く瞬間に、ようやく慣れてきた。