オモイノテイギ
英国SS
―アシュレイが休日の午前中に寮にいるのは珍しい―。
誤解だと受け流したが、正直、いつからそんなに詳しくなったんだと突っ込みたい気分だった。しかも当の本人は、やはり自覚のかけらもない。
だいたい、この部屋に当たり前のように他人がおさまること事体が『普通』とは程遠い。
先日、手に入ったばかりの桂花茶を淹れながら、アシュレイはぼんやりとそんなことを考えていた。
―ユウリが頻繁に来るようになってから、どうにも茶のコレクションが増えたような気もする。
気がする前にそれは事実なのだが、そんなことをわざわざ教える気にもなれない。押しつけがましいのは嫌いだ。
ふわりと金木犀の香りが漂う。空を見つめていたアシュレイはそれで現実に引き戻される。
―何なんだ・・・。
やり場のない感情を、興味を示したらしいユウリへの説明でどうにか隅においやった。
それでも。
一面の金木犀が見たい―、などと無邪気に言ってくれるのである。
「いつでもつれていってやるさ」
不意に遊び心が沸いた。
「え?本当!?」
目を輝かせるユウリは、まるで純真無垢な子供だ。吸い込まれそうな瞳に向かって、何となく言ってみた。あの顔はどんな反応をするやら。
「新婚旅行でならな」
とたんに下を向いた。純粋にがっかりした様子。これでは本当に子供と変わりない。
―おいおい・・・。
気づかれないように苦笑し、さっさと本題に入ることに決めた。
いつか、期待どおりの反応が返ってくるのだろうか―。