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進むもの
英国SS
ここまで来たら、戻れない。でも、それでも構わない―

「ふざけんな、あんた!何の権利があって―」
胸元を掴んで、殴り倒してやるつもりだった。相手は魔術師とか妙な異名がついているが、そんな の知ったこっちゃない。
ただ、フォーダムが殴られて、吹っ飛んで。
それだけがオスカーの心を掻き立てた。せり上がってくる熱いものに乗せられるように。

―お前も同罪?

そうだ。だから何だというのだ。

そう、答えるはずだった。
その場で挑戦してやるつもりだったのに、逆に攻撃されて何も出来なかった。
フォーダムを守るつもりでいたのに、それすら粉々に砕かれて消えていった。 あの場で、自分の残したものはなにもない。ひとかけらの塵すら残っていなかった。
歯がゆくてどうしようもなくて、力任せに壁を殴りつける。
鈍い音と同時に痛みがやってくる。じんじんと骨に伝わってくる熱さが、今の心境を表すかのよう に主張をはじめた。
それでも、こんなものでは足りない。

「くっそ・・・」

騒ぎの後、煩いセイヤーズを降り切って自室に辿りつき、鏡に映る首のアザを見つめ、オスカーは 悔し紛れに吐き捨てる。

―あいつ、ちっとも本気なんかじゃなかった。

もともとこういう性格だ。退屈は嫌いだし、そのせいで何度かトラブルに見舞われたこともある。 おかげで妙に喧嘩慣れしてしまった。だから、解る。
それに、フォーダムがそんなに特別だとでもいうのだろうか。黙って殴られるフォーダムを見て何 故か直感してしまった。
ただでさえ良からぬ噂が立っているのだ。あそこで庇うよりも徹底的に見せつけたほうがいいとい うわけだ。
優等生のベルジュもそれを察しないわけがない。
おまけに―

あのどこまでも余裕の覗える青灰色の悪魔の瞳。かかって来いとでも言わんばかりの―

「・・・だったら、やってやろうじゃないか」
あいつと同じものを欲しがるなんて、えらいことを考えてしまったものだ。
先に進めば、戻れない。でも、それでも構わない―

やる時には、徹底的に?

残念ながら、それは俺のモットーだ。