―全く。
なんというか、溜息しか出て来ない。
やれあっちで軽いケガをしたただとか、騒ぎが起きたとか。
初めてのイベントなのだから、皆浮かれていて当たり前なのだが。
何だって僕はこんなことをしているんだ・・・
医者の息子なので、多少の医術の心得はある。
何より父を尊敬しているし、怪我人を見ると放っておけないのである。
それは昔からの自分の性質だし、頼られても不満を感じることはなかった。
なのに。
「カップルになるチャンスを逃がすよ?」
ベルジュはそう言っていた。
僕は「それは別にどうでも」と答えた。
実際出張看護で忙しかったのだ、それは事実だった。
けれど。
今さっきちらりと見えてしまった、相棒の楽しそうな笑顔。
その隣にはフォーダム。
―なんだっていつもそうなんだ・・・!?
今すぐ救急箱を放り出してオスカーを引っ張り出して来たい衝動にかられる。
あいつはいつも運が良くて、それはもう―
「あ、セイヤーズ、こっちです!」
その時、自分を呼ぶ声が聞こえてきて、彼は思考を中断した。
「仕事が趣味」だとか言われているが、それはそれでどうしようもないからだ。
その数日後。
ある事実によって、セイヤーズはいくらオスカーに文句の嵐を浴びせ掛けても足りない気分になるのだが、それはまた別の話である。
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2007年度の冬コミで発行された英国アンソロジーに「ドナルド・セイヤーズの憂鬱」を載せたのですが、その
サブエピソードというか、そんな感じで書いてみました。18巻ネタ。
mixiで書いたものに少し加筆してます。(1行だけですが;)
―巷では、オスカーの不憫ぶりが有名ですが(笑)セイヤーズだって地味ーに不憫なんですよね・・・。このまま
部外者なのはさすがにちょっと淋しいなあ。