2.14. 0:00 AM
デスノートSS
「―月くんも食べませんか?」
いつも一人でソファに座って黙々と甘いものを食べている竜崎に、突然そんなことを言われた。
手に持っている蓋つきのバケツのような缶の中には、ハート型の赤いコーティングをしたチョコが
ぎっしりと詰まっていて、僕は軽い眩暈を覚える。
―何が言いたいんだ、竜崎・・・。
いや、逆に予想がつくところが怖い。
「・・・いや、いい・・・」
何となく目を逸らして言うと、彼はいつも通りの淡々とした口調で続けた。
「―遠慮することはありません。美味しいですよ。なんなら、食べさせてあげしょうか?」
言いながら、ちらちらとこちらを覗う竜崎。
―だから、僕になんて答えて欲しいんだ!?お前は。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。自分で食べるから」
心の中で文句を言いながら、それでも逃げ道を探そうとする僕に、
「そうですか、残念です」
珍しくあっさりと引き下がった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
そんなことがあってから、30分間。
二人きりの部屋には、不安定な空気が漂っている。
とでも言えばいいのだろうか。
―気まずい。
相変わらず、勢いよくハートは減りつづけていて、そろそろ底をつくだろうかというところだ。
今、何か行動しなければ機会を逃がす。
解っているのに、体が上手く反応しない。
―自分の分析したって、どうしようもない・・・。
大切な存在であるはずの竜崎の背中が壁みたいに思えて―思わず溜息が漏れた。
その微かな音に重なるように、
―ガタッ。
竜崎が唐突に立ちあがった。手にはハート入りの缶を持ったまま、こちらを見詰めてくる。
「―先ほどから何気ないふうを装っている月くんには、演技力が足りません。バレバレです」
「・・・。そ、そうか?」
変わらない淡々とした話し方と、視線。なのに僕はそう返すのが精一杯だった。
「そうです。演技するなら完璧にしてくれないと困ります」
「・・・え?」
視線が少し下を向いて、竜崎の顔に陰ができる。
「いくら私でも、傷つくことはあるんですよ?・・・人間ですから」
だ、だから。僕はどうしていいか解らなくて―!
竜崎を悲しませたいわけじゃ、ない。なのに、竜崎はいつも一方的に・・・・
「だから、責任とってくださいね、月くん」
―は・・・・・・・・・!?
次の瞬間、腕を掴まれて口を塞がれた。
「・・・・・・・・り・・・・・・・・・・・」
ほんのりと温かい、軟らかな感触は予想に反してすぐに離れていった。
口の中には溶けかかった甘いチョコレート。
「自分で食べるって言ったじゃないですか」
「だ・・・」
言い返そうとすると、間髪いれずに口を挟まれた。
「黙っててください」
その中で割れると寂しいですから。
―時計の針が、ちょうど午前0時を回った。
『2/14 0:00 AM』